見方を変えて思い込みから一歩踏み出すストーリー|島らっきょう
「らっきょうが、ニガテで」
国際通りを歩きながら、こんな会話をしていた。
ひょんなことから沖縄にやってきた5人。
白杖を手にしたサラリーマン風の50代男性、
アジア圏のどこの国から来たのか分からないが日本語を話す40代男性、
どこにでもいそうな40代女性、
そして2人の女子学生。年のころは、高校生くらいだろう。
実に不思議な組み合わせの面々だが、国内外の観光客でごった返す国際通りではあまり気にならない。
同じ街に住んでいるこの5人。
サラリーマン風の男性は、会社を経営している代表者。
国籍不明のアジア人は、華やかな経歴を捨て故郷を盛り立てる為に帰郷した者。
普通の女性は普通の主婦で、女子学生は見たままの女子高生。
もし、この5人が同じ街の通りを歩いていたら、とても気になるだろう。
年齢も性別も社会的属性も背景も、何もかもが違うのだから。
しかし、人の縁とは不思議なものだ。
この不思議な組み合わせの面々は、不思議なご縁で出会ってしまう。
そして、それぞれの答えを見つけるために、同じ街から沖縄へやってきた。

「らっきょうが、ニガテで。」と普通の主婦。
「沖縄は島らっきょうが有名だよ。」と帰郷した者。
「せっかくだから、食べたらいいよ。」と会社の代表者。
ということで、オトナだけで打合せをすることに。
女子高生が居ぬ間に、悪いオトナが早々に打合せという名の酒盛りをはじめる。
「生の島らっきょうがありますよ」と店主。
白い味噌をのせて、その上に繊細に削られたかつお節がかかった生の島らっきょうの小鉢。
一つ箸でつまむ。
見た目は、小葱の根がぷくっと膨らんだような、小さくて細長い島らっきょう。
勝手知ったるらっきょうとはまるで違う。
サクッ
あれ?くせが無くて食べやすい。
香りや辛みが強烈だと聞いていたけど、雑味を感じない。
島らっきょうって、旨いんだ。
そもそも普通の主婦がらっきょうが嫌いになった理由はこうだ。
古い記憶では、小学校の給食でカレーライスの横に二つらっきょうが添えられていた。
そのとき、生まれて初めて見たらっきょう。
自宅では、らっきょうが食卓に並ぶことがなく、きっと母親もらっきょうがニガテなのだろう。
はじめてのらっきょうは、ゴム手袋の歯ざわり。
噛むたびに、キュッキュッとする触感。
それが嫌で嫌で、お初の一つ目は3回くらい噛んで飲み込み、もう一つは1回くらい噛んで無理やり飲み込んだ。
涙目で終えた給食の時間は最悪だった。
「これ、戴き!」
小鉢のなかに、島らっきょうが最後の一つ。
普通の主婦の私が頬張る。
「もしかしたら今なら、らっきょうも食べられるかもしれない。」
あの日から四半世紀以上が過ぎ、そう思える自分が居る。
とりあえずやってみなくちゃ分からない。
私が沖縄で見つけようとした答えは、見つかったものもあるし、まだ見つからないものもある。
それでもいい。
動き続けた先に、いつか答えに出会えるかもしれないと思うから。


